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執筆者の写真Yukiko Yoshida

反対の行動スキル『マイ・インターン』編



うまくいかないこと続き

心がくじけ、つらさに耐えるのももう限界。ついに最後の切り札である頓服を飲むものの、飲んだ後で泣き叫んだり気分を高ぶらせてしまったりと、結局「薬を飲んで休む」プランがおじゃんとなってしまう。

そんな、色々うまくいっていない有輝子です。

ベッドでうめきながら横になっていても、つらい考えばかりが浮かんでくるので、考えのうち一つに焦点をしぼることにしました。

それがズバリ、昨日見た映画『マイ・インターン』

気難しい・気性の荒い役を演じる印象が多かったロバート・デ・ニーロと、『プラダを着た悪魔』とどう演じ分けるんだろうと気になっていた、アン・ハサウェイの共演。実は見たのは2回目となります。アン・ハサウェイはやっぱりなみなみならぬ女優なだけあり、この作品にはこの作品のアン・ハサウェイが見られました。ロバート・デ・ニーロがあら不思議。好いおじさん(おじいちゃん)をやっているからかなんだか新しい感じ。でもその役柄がなんとも言えぬ、おじいちゃまなんです。

(ちょっとまてよ・・・。もしデ・ニーロが他で「ザ・善い人」やってる作品あったら、ぜひ有輝子に教えてください。自信ない汗笑)

今回はそのおじいちゃま、ベンをテーマにちょこっと書いてみたいと思います。

 

反対の行動のスキルについてちょこっと

弁証法的行動療法(略してDBT)には、反対の行動のスキル、というものがあります。これを今から自分の理解の範囲で、実践している当事者として、ふにゃーんと説明します。

例えば怒ると、その怒った対象に対して攻撃的な衝動が生まれるのが本能らしいです。

足の小指が、ドアに当たって超痛かった。こんちくしょードアめ!と、怒鳴りたくなります。

何度やってもうまくできない自分に腹が立った。自分を傷つけたくなる。(この場合怒りだけでなく、自己嫌悪もあるかもしれない)

家族にものすごく腹が立った。物を投げつけてやりたい。(すいません、あくまで私の正直な例えです汗)

この場合、その通りに行動するとどうなるでしょうか?

すっきりする場合と、なんだか余計に腹が立つ場合と、色々あると思います。

怒りという感情は、とても大事です。事実、感情というものは、どれもすこぶる大切です。ただし、この感情が時々大きくなり過ぎて、行動がびっくりするくらい強く出てしまうことがあります。

例えば、小指をぶつけて痛くて悲しいより先に強い怒りが!!

勢いで思いっきりドアを殴ったら、今度は手がめちゃめちゃ痛くなって、ものすごーくムシャクシャします。どうしたらいいこの不完全燃焼な怒り!地団駄を踏む!小指痛い!その辺にあった物を壊してみた!大事な物だった!自分に腹が立つ!小指も手も痛いし、しまいには勢いで大事な物を壊した自分にめちゃくちゃ腹が立つ!

これはあくまで例えですが、こんな風に、怒りの感情自体が悪いものでなくても、うまくその感情を乗りこなせなくて、事態がどんどん複雑かつ大きくなってしまうこともあります。

少し読んでてつらいかもしれませんが、私は自分に腹が立ったとき、自傷衝動がおきることがあります。そんな時、例えば思いっきり頭を壁に打ち付けます(ごめんよ脳細胞)。しかし、打ったときの感覚に納得がいかないと、もう一回。もう一回。もう一回。なんで怒りが収まらないの?手首をズタズタに切ってやる。死んでやる。—究極的には、そこまで衝動が広がってしまうことがあるのです。これは実際に何度も通ったパターンです。

一つずつの感情は、一つ起きたらそれが去るまで数秒らしいのですが、こちらの気持ちとしては「去ってない!強くなってる!」

それは、感情が起きて、行動をしたら、行動がさらに感情を起こしてしまうから、らしいのです。(スキルで習いました)

そこで、反対の行動。いやいや、無理やり感ハンパない、と思うでしょ?(思わない人もいます)

ところがどっこい。面白いんですね〜このスキル。最初はもちろん「そのままやっちゃいたい行動」を「そのままではやらない」ために頭もエネルギーも使います。したい気持ちが大きいと比例して疲れちゃうことも私はあります。けれど、例えば小さいことで試すと、ちょっと面白いんです。その話は置いとくとして、反対の行動をふにゃーんと更に説明すると、こうなります。

小指をぶつけた。超痛い!ドアに怒鳴りたい!▶︎の反対は▶︎ドアに優しい言葉をかける「例:ドアさん、ドアさんも痛かった?」

これは極端に反対ですが、別に真逆である必要はありません。▶︎ドアに怒鳴らない「例:いて〜な〜もう」

要するに、感情が強ーくおきると心がぐらぐら揺れますが、行動によっては、そのぐらぐらでいつまでも苦しまなくて済むということです。まとめちゃったけど、これ、あくまでスキルを実践してきた有輝子の個人的な理解でございます(汗)

 

ベンから学ぶ反対の行動のスキル

映画を見ていたら、私はベンが色んな場面で反対の行動をしているのが目につきました。ネタバレになっちゃうかもしれないギリギリの範囲でそれを書くので、映画を見るのをこれからの楽しみにしている人は、そのスレスレさをどうか御堪忍ください。

まずベンは、奥さんに先立たれたやもめです。本人の「悲しさ・寂しさ・虚しさ」が最初の方で描かれていました(ネタバレ!?いや、多分予告編レベルのネタバレ!汗)。とにかくベンは、その悲しさ・寂しさ・虚しさにぐらぐらする心も正直に感じていました。でもどうして圧倒されたり、ぐらぐらでどうしようもなくなったりしなかったんだろう?私だったら最終的に、あーもう何やってもだめだ。妻は帰ってこない!俺も後を追ってやる!って思いかねません汗。ベンはというと、決まった時間に起きて、決まった時間に毎日カフェに行きコーヒーを飲むと決めていました。カフェには人がいる。ベンはそういう毎日を送ると「まだ自分は社会の一部だ」と感じると言っていました。ちゃんとそのシーンを見返す元気がないので、正確な台詞ではないかもしれません。😥

アン・ハサウェイ演じるジュールズの会社に応募するときも、何もかもが現代的で、履歴書じゃなくて自己紹介ビデオをYouTubeにアップしろとか、ビデオの形式は「.mvg」だとかエムなんちゃらでさっぱり分からないベンでした。しかし「分からない」「あまりに難しい」と思ったベンは、そのぐらぐらを感じながらも、心のこもった素晴らしいビデオを作り上げます。作るまでの不安や緊張もちゃーんとあった上。分からないからできない、をじゃあ新しく教わってやってみよう、にしたベンです。ビデオの内容は是非本編で見てほしいです。素敵。

ジュールズ直々のインターンに配属されても、な〜んか避けられてる。必要とされない。仕事の指示もこない。私だったらくじけます。毎日通勤するのがおっくうになってしまいそうです。仕事に行く意味が分かんなくなっちゃう。ベンは、朝いちばんに一言「行動あるのみ」。英語だと"Make it happen."だったと思います。でもそれも、無理やりベッドから這い出て身体にムチを打って言っているわけではなさそうでした。そりゃ嫌になりかねない状況で、ベンも少しぐらぐらを感じていたようです。でもベンの中には何かそのままにしていてもなーという感じも伺えました。

しかし。もしうつ病とかで、本当に仕事に行かれない人は、休む自分を責めないで、ゆーっくり休んでください。それは回復に向けての「行動」ですから、「仕事に無理してでも行きたい」が回復とは反対の方向を向いているのであれば、その場合の「休む」は「おっくうで休む」の休むではなく、ぐらぐらを拡大しない為の、反対の行動だと私は思います。

話を戻すと、ベンは、自分がどんなにやんわり煙たがられていながらも、遠巻きにジュールズをしっかりと直々のインターンとして一番に考えていました。だからジュールズの肩の荷を楽にするにはどうしたらいいかな?とそっと考えては、そっと行動します。仕事が与えられないから、といって憂鬱に一日を過ごすのではなく、社内で自分が役に立てそうな場を見つけてはそこで自分をしっかり活かしていました。私からしたら、反対の行動です。そしてそうすることがベンにとっては「無理」ではなく、むしろより自分の本領を発揮して行くことにつながっていました。

そしてジュールズを「働くママ」だ、とチクチク言葉を浴びせる作り笑顔のママ友たちと、ベンが話す機会があったときも、ベンは「ああ・・・ママ友か」とやれやれとした表情を浮かべながらも、興味深い反対の行動をします。普通あの押しの強いママ友たちを前にしたら、私は居心地悪いし緊張するし恐いです。ベンは堂々とした態度で彼女たちに近づき、自分がジュールズの「部下」であることを誇らしげに伝えます。ジュールズがただの「働くママ」じゃない。ママ友たちの知らない、輝くジュールズを、ベンはキラキラした表情でばしっと話します。その時のシーンは是非本編でみてみてください。ママ友コミュニティーは相変わらず風当たりの強い、チクチクした態度の場かもしれません。でもこの時のベンの反対の行動は、賢いなぁ、と私は個人的に思いました。

これ以外にもベンには沢山、反対の行動がありました。もしかしたら、こんなよくできた人はいない、ベンもジュールズもどうせフィクションよ、と思う人もいるでしょう。私もそう思います。映画という物は、映画を作る人たちが作った、作り物です。でもその作り物には、時に人生を一瞬明るくしてくれたり、傑作だ!と叫びたくなったり、感動して泣いたり、腹を抱えて笑ったりする、力があるとも思います。いくら作り物といえど、映画好きの私としては、舞台裏(製作陣)も舞台上(見える部分)も、わくわくして観察するのが好きなのであります。

今回のこの『マイ・インターン』だって、超大作!とか、最高傑作!というほどのものではないでしょう。脚本がすごくリアルでやばかった!というわけでもないかもしれません。でも、映画って、だから良いってもんでしょうか?世間の評価が高いから絶対に良い、誰々がつまらないと言っていたから面白くないんだろう、と、そんな風に決めてしまうのはもったいないなーと私は思います。話がそれちゃった汗(←大の映画好き)

戻ると、そんな「映画」というひとつのツールの中に、スキルのヒントを見いだした私はめでたいのでしょうか。いいんだー、めでたくて。ぐちゃぐちゃにつらい気持ちが、それで少しでも楽になるならば。ということで、ベッドでもだえて過ごすより、このことに焦点を絞って書きたいままに書いちゃおうという作戦はひとまず終了です。これを読んでいただいている今、有輝子は今もきっと色んなつらさに向き合いながら、日々を過ごしていることと思います。なんだかつらさの一部を公開したようで恥ずかしいですが、読んでくださってありがとうございます。これを書き上げたことが、私の今日の自信の踏み台になりますように。

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